冬の磯釣りは”島の文化”
三宅島では例年、11月中旬を過ぎ朝晩にコートが必要な気温になると尾長メジナシーズンに突入する。
これは毎年の恒例行事のようなもので、この時期になると今まで誰も姿を見せなかったであろう何処かの地磯に、ある日を境に突然釣り人の姿が見えるようになる。
三宅島の中で色々な噂が広がり「あの磯で沢山釣れたらしいよ!」「デカいシマアジが上がったよ!」「餌もとられなかったよ!」等々釣り人の心をくすぐるような話ばかりとなる。
皆ニコニコ笑って聞いているようで、内心は穏やかではないはず・・・
「俺の方が沢山、大きな魚を釣ってやる!」と思っているのは見え見えです。
これらの話の蔓延度は釣りをしない島民の耳にまで届くほどで、その年のシーズン始めの釣果に比例して留まるところを知らずに広がっていきます。
そのうち負けず嫌いの釣り人がデマ情報を流したり、それを確かめに行って折角の貴重な休日をつぶしたり、昔話や経験談を聞いているだけで面白いものである。
三宅島の冬の釣りはある意味では”島の文化”といえるだろう。
一方、強い寒気や西高東低の気圧配置がもたらす西風も冬の釣りを同じ”島の文化”である。
「釣りに出掛けよう!」と満を持して準備をしても、ご覧のような風波に行く手を阻まれることも多く、だからこそ凪に恵まれたあとは、その釣果や海況の話に沢山の花が咲くこととなるのである。
長年春夏秋冬の気候に合わせて暮らしている島民は海、山、風、波など自然がもたらすあらゆる状況に対応し、またそれを充分すぎるほど暮らしに生かしている。
だからこそ、島ならではの暮らしのなかでこそ感じることが出来る自然の摂理には逆らうことなく、磯とも魚とも接することができるのである。
また逆らえないということも熟知している。
絶対に無理はしない、させない。
私も若輩ながらそんな島民の1人。
ガイド案内する立場としては、それらを踏まえお客様が釣りを開始するまでの行動で、どこまでならOKか?を判断させて頂いている。
まず、天候。特に風向きと強さ。波を起こすのは風であり、時には潮流だったりもする。
次にお客様のコンディションや希望。
希望の部分に関しては何しろ自然が相手なもので、100%は叶えられません。
コンディションに関しては、足場の悪い磯を歩けるのか?長距離歩行は可能か?夕方の暗隅で魚を持って無事に上がって来られるのか?その日の体調はどうなのか?などなどである。
そのことが海の安全、天気予報の読みなどにつながり、我々若い世代へと引き継がれ、時には気象予報士ですら当たらない複雑な天気図を一瞬にして言い当てたりするのである。
恐るべし島の年配者、根拠のない神がかり的な言動や行動、いったい何なんでしょうね?
磯に立って竿を振るだけが釣りじゃなく、そこまでに至る様々な経緯も含めて釣りと呼びます。
それを独特の”島の文化”と呼んで良いのではないかと思う今日このごろである。
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